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2006年7月 1日

青学特別公開講座

本日、青山学院大学の特別公開講座『演劇への視点-過去から未来へ-』に行ってきました。第3回目の今日のテーマは、「役者の眼から見る今日の歌舞伎」。講師は、團十郎さん。早く行って、良い席を確保しようと思っていたのですが、青学の門の近くで仕事の電話。BKN話(BKN:バカこくでねぇの略)に、歩きながらでは話にくいため、門の前でしばし立ち止まって話しているうちに開演の時間が迫ってきてしまい、会場に着いた頃は、後方の席しか残っていないくて踏んだり蹴ったり。

講演時間は、7:00~8:30P.M.の1時間半。レジュメには、

≪ 内容 ≫
一. 歌舞伎は演劇の一ジャンル
演劇と二足歩行
直立による両手の自由と表現
直立による声の変化
求愛と表現
宗教と儀式
東洋と西洋の対比
二. 歌舞伎の発祥と発展
出雲阿国
野郎歌舞伎
荒事と和事
舞台機構の発達
化粧
義太夫物と松葉目物
明治以降の歌舞伎
三. 役者から見る今日の歌舞伎
戦後60年の歌舞伎
教育と歌舞伎
ういろう売りのセリフ

矢の根のセリフ

とありますが、最初の20分くらいは、「畳」を例に日本語の表現力のすごさや文化が表現を生み出すという話を交えながら闘病生活のことについてのお話。実際はとてもつらい経験をされていると思うのですが、ユーモアとウィットにあふれたお話ぶりに会場も思わず笑いを誘われてしまいました。

次の30分で、レジュメの1と2。マントヒヒ、チンパンジーやボノボの生態を例にあげながら、人類の発達と演劇の発達の関係についての話はなかなか面白かったですが、周囲に座っていたお嬢さん方の中には退屈してしまった人もいたようです。2足歩行により声帯が発達したという話は興味深かったです。

歌舞伎の歴史については、知っている人が多いだろうということでさらっと流したようです。関ヶ原の戦いで勝った東軍(江戸側)が荒い気性、英雄の芝居を好み、負けた西軍(上方)が男女の機微を描く芝居を好むようになったこ。戦後の日本も同じような道をたどっているように思われるという話はうなずけます。

最後の30分で、「外郎売」と「矢の根」の台詞の実演。「外郎売」の台詞は現代の人も聞いたことがある、馴染みのある言葉が多いので聞き取りやすい。「矢の根」は聞き取りにくい。が、「矢の根」は江戸の市民に大ウケした出し物である。それは、江戸の人達にとって馴染みのある言葉が多く、かけことばになっているから。ということで、「矢の根」の台詞の説明。説明を聞いた後と聞く前ではどれだけ聞き取りやすくなるかということで、再度、「矢の根」の台詞の実演。なるほど、さっきよりもかなり聞き取れるようになりました。

話はそれますが、歌舞伎の台詞が分かりにくいために歌舞伎鑑賞教室で字幕を出すこともありますが、「矢の根」などの台詞を字幕に出したところで意味が分からなければ、字面を追うだけで精一杯になってしまいます。それよりも事前に台詞の意味、あるいは粗筋を頭に入れて見た方がより楽しめるのでは。歌舞伎に限らず日本の伝統芸能を見るために字幕が必要というのはちょっと情けない気がします。自国の文化を理解し楽しむためには観る側の努力も必要なのではないでしょうか。

最後に質疑応答。これがなかなか面白かったです。

Q1. 歌舞伎の演出について(歌舞伎に演出家はいるのか?歌舞伎に演出家は必要?)

A1. 歌舞伎は座頭が全体を見ることになっている。座頭が見ることは大事であるが全体の調和も必要。海老蔵のロンドン公演には、監督的な立場で参加した。劇場によって照明や舞台全体の配置なども客席から客観的に見て調整する必要がある。来年の3月のオペラ座には自分も出演するため、客席から舞台全体を客観的に見てくれる人を検討中であるが、歌舞伎のことに詳しく適切な助言をしてくれる人がなかなか見つからないので苦慮中。

Q2. 家の芸を伝えるために大事なことは?

A2. 江戸と上方とは少し違う。江戸は、まず型を教え、その次に精神。型がある方が伝えやすいし、残りやすい。型は重要である。精神だけでは伝わりにくい。昔はビデオなどなかったので、見たことのないものは、どういう芝居なのか全く分からずに、すべてその場で教わった。最近は、教わりに来る人はビデオを見てくるので、みな形はできている。ただし、ビデオをに映っているものが100%ではないということを理解することが必要。

Q3. 地歌舞伎や子供歌舞伎の保存についてぜひ力添えが欲しい

A3. できるかぎり協力していく。予算なども全国に満遍なく予算を振り分けるよりも、種や芽があるところに水を撒くように働きかけをしている。

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コメント

kirigirisuさま、良きものに参加されましたね。
楽しく拝読いたしました。

>「矢の根」は江戸の人達にとって馴染みのある言葉が多く、かけことばになっているから。
当時にしてみれば斬新な現代劇だったのでしょうね。言葉は時代を代表するものでもありますから、現代の平成言葉の面白さも巧く使っていただけたら、平成歌舞伎が残せたら、と思っています。

>戦後の日本も同じような道をたどっているように思われる
戦前の古きものだけが良き物と評価されてる根本に、負け犬根性があるように思えます。ちゃんと現代も未来も、ダメとレッテル貼らずに頑張っていただきたいです。

>江戸は、まず型を教え、その次に精神。型がある方が伝えやすいし、残りやすい。
>種や芽があるところに水を撒く
まったくですね~すべてにうなずいてしまいます。
上方のラブストーリーは嫌いじゃありませんが、今足りないのは美しきスターかと(笑)。役者を育てることだって大事です。血だけに頼っちゃいられません(笑)。

>BKN話(BKN:バカこくでねぇの略)
ちょっとツボにはまりました(笑)。メモらせていただきます。

投稿: 恵美 | 2006年7月 1日 10:59

もう少し具体的な歌舞伎のお話があっても良かったかなぁとは思いますが、團十郎さんの「日本の文化に誇りを持って欲しい」「自分のおかれた条件の中で精一杯生きる」「歌舞伎は理屈ではないfuzzyな部分も大切。理論を超えたものがある」などの言葉が印象に残っています。

>役者を育てることだって大事です。
役者だけでなく歌舞伎に携わる人を長期的な視野に立って育てる必要があるとおっしゃっていました。現在、舞台で清元を語れる人が10人いるかいないかだそうです。少ないとは思っていましたけれど、そんなに少ないとはびっくりしました。

>ちょっとツボにはまりました(笑)。メモらせていただきます。
仲間内でよく使っていたものです。色々と応用が利きますので是非お使いくださいませ。(笑)

投稿: kirigirisu | 2006年7月 1日 14:26

うんうん、と頷きながら読んでしまいました。
團十郎さんのお話は、以前オペラを演出された時に伺ったことがあるのですけれど、非常に理路整然としていて、歌舞伎や”團十郎”を知らない方でも興味を持って聞くことができるものだったのを思い出しました。

字幕の件、全くの初心者向けに出すのは、取っ掛かりの1つにはなると思いますけど、絶大な効果を期待できるものではないですよね。それよりも”前知識はあるけれど、完全に聞き取れる状態ではない人”にとって、字幕があるのは便利かも。必要ないときは邪魔だし、風情が損なわれる気もするので、通常公演まで常に着くようになったりするのは、嫌なんですけれど。

BKN話、私もツボですー。使わせていただきます(笑)。

投稿: asari | 2006年7月 1日 21:50

團十郎さんのお話は、言葉が的確でとても分かりやすかったですし、ウィットを効かせたお話のときは、ちょっといたずらっこのような表情をなさって、とても魅力的な方ですね。(^^)

「矢の根」の解説を聞いて、社会人向けの歌舞伎鑑賞教室でも、演目の一部の台詞(聞かせどころ)を少し説明してくれるとよりお芝居に対する興味が湧くんじゃないのかなと思いました。

「BKN」ぜひ、お使いくださいませ。(笑)

投稿: kirigirisu | 2006年7月 1日 23:15

こんにちは。ちょっとご無沙汰しておりました。

ところで良いものに参加されましたね。
私も他の皆様同様、興味深く拝読致しました。

そしてBKNにも、同じくツボにはまってしまったのでした・・・(笑)


10月歌舞伎座情報、有難うございます。
今のところは「予定」とのことですが、この二文字が完全に消えれば歌舞伎座行きは決定です^^
だけどお財布的には厳しいです(涙)

投稿: よんたん | 2006年7月16日 17:03

よんたんさん、おかえりなさぁ~い。(^^)

10月の歌舞伎座の正式発表が待たれますね。10月も見たいものがいっぱいあるのでホント困っちゃいます。秋に備えて8月は大人しくしているつもりだったのですが、気が付くと結構予定が入っています...。

投稿: kirigirisu | 2006年7月16日 19:49

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